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男鹿半島に咲く、青の紫陽花

なまはげの郷として、知られている秋田県男鹿市。
日本海に突き出た独特の地形が生み出す男鹿半島の雄大な景色を眺めに、たくさんの人が、日々訪れる。

そんな男鹿半島に、6月中旬から7月上旬にかけての時期に、絶対に訪れたい場所がある。

それは男鹿半島の北端、北浦地区の港を見下ろせる一画に建つお寺、雲昌寺。
今では「アジサイ寺」として、6月から7月の約1ヶ月の間に、およそ3万人もの人が訪れ、
男鹿半島の代表的な観光名所になっているお寺だ。

完璧で、ぴったりな、青色のルーツ

雲昌寺が「アジサイ寺」と呼ばれるようになったキッカケは、
たった一輪の切り花を見つけたことから始まった。

雲昌寺の副住職、古仲宗雲さんが、境内に小さく咲く紫陽花を見つけ、その切り花を一輪挿しに飾ってみた。
すると、あっという間に鮮やかな青色の紫陽花が咲きはじめ、その青色の紫陽花に古仲さんは魅了されてしまった。

色々な色の紫陽花を植えることも可能だったが、
魅了された、この青色の紫陽花を境内にたくさん植えてみたい。
そんな想いがきっかけで、たった一株の紫陽花が今では約1,500株もの青い紫陽花として境内に広がっている。

自らの手で育て、「切らない」を選ぶ

元々、紫陽花には赤い紫陽花、紫の紫陽花、黄色の紫陽花など様々な色の紫陽花がある。

様々な色になる理由とは、アントシアニンという色素によるもので、
これに土壌のアルミニウムイオンや補助色素が加わって無限に色合いを変える。

紫陽花の色は土壌で決まり、土壌が酸性であれば青色、アルカリ性だと赤色、中性であれば清廉な白になる。

土が花の色を決めるのである。

紫陽花が土と会話して、これから咲く色を決めるのと同じで、
古仲さんも紫陽花と会話するように、ひとつひとつ丁寧に手作業で剪定を行うのがこだわりだ。

1500株もの紫陽花を、機械を使わずに手入れをするのは大変だが、
古仲さんは「花も切られたら痛いと思う。人と接するように、花にも接したい」という。

効率性よりも花の想いに耳を澄ませ、丁寧に丁寧に、青色の紫陽花を育てている。
そんな古仲さんの想いと愛情込めて育てられた紫陽花は、毎年華麗に咲き誇り、人々はその美しさに魅了される。

青の絶景、ジャズが奏でる音色、雲昌寺

青い紫陽花を育ててきて、15年の月日が経つ。
古仲さんが育てた「青色」の紫陽花は、いまでは一面に広がっている。
空や境内から見える海のコントラストが紫陽花と調和し、青の絶景として雲昌寺に来る人たちを包んでくれる。

お寺の本堂から流れてくるのは、ジャズの音色。
その音色が目に映る紫陽花をモダンに、そして時にはリズミカルに、映し出している。

6月から7月と限られた期間だが、
だからこそ、副住職の古仲さんが大事に育てた紫陽花を、その時期に見て欲しい。

ひとつの青が、今では境内に広がる青として、人々を楽しませてくれる。