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Taste of Nature

水車とそばの町・葛巻

そば畑が続くのどかな風景が広がる岩手県葛巻町では、涼しい気候により昔からそばの栽培がさかんで、水車を使ったそば作りの技法が大正時代から受け継がれてきました。そんな味を、創業27年間守り続けているのが「森のそば屋」です。

店内では「田楽餅」や「やまめの塩焼き」が囲炉裏で焼かれており、食欲をそそります。

 

挽きたて・打ちたて・茹でたての三本拍子

「天ぷらそば」「山菜そば」「とろろそば」など豊富なメニューから、人気メニューの「森のそば膳」を注文しました。ざるそばとかけそばの二種類とやまめの塩焼きが楽しめる、贅沢な一品です。つなぎに卵と納豆を使っているというそばは口当たりが滑らかで、素朴な甘みが噛めば噛むほど口の中に広がります。県産のにぼしと花かつおで取った出汁が豊かな風味を出し、自家栽培された野菜を使ったお煮しめやてんぷらがそばとよく合います。麺が伸びてしまわないように温かいお蕎麦が後から出されるのも、お店の気配りが感じられます。

食後のデザートに運ばれてきた、黒豆きなこのそばがきと味噌味の田楽餅は、そばの違った美味しさを味わうことができます。

葛巻の人が、葛巻の食材で、葛巻の伝統手法にこだわる

美味しさの秘訣は、蕎麦粉を水車で挽くことです。葛巻産そばを、水車で石臼を回してゆっくりと時間をかけて製粉することで、余分な熱が加わらず蕎麦粉の風味が落ちないそうです。すべて手作業でやっているから、その日にお客さんに出す分の粉だけ挽いています。米粉やきな粉も同様に作られています。

そばは、地元のおばあちゃんたちが手作業で打っています。「『おいしくなーれ』と心をこめてこねると、なぜか美味しくなるんです。」と語ってくれたのは、店主の高家章子(こうけ あきこ)さんです。ゆっくり時間をかけて蕎麦を打つことによって、蕎麦の弾力と歯ごたえが残るそうです。店内の2階では、そば打ちの様子を気軽に見学することができます。

次世代へと受け継がれる水車そばの伝統

「同じ料理でも、おばあちゃんが作るとなぜかおいしいでしょう。そういう味が消えていってしまうのを、黙って見ていられなかったんです。」と語る高家さんは、時代の変化と共に消えつつあった水車そばの伝統をつなぎとめるために立ち上がりました。反対する地域の人々を10年かけて説得し、ようやく開店に至ってから今年で27年目。地域の女性たちに働く喜びを知ってほしいという想いから、地元のおばあちゃんたちと一緒に店を立ち上げ、「森のそば屋」という店名もみんなで選びました。創業以来、葛巻町ならではの伝統的なそば作りを大切に守り続けています。

記者の感想

取材の当日、「そば畑の鑑賞会」というイベントに飛び入り参加させて頂きました。地域の人々がみんなでそば畑を散策し、それぞれ思い思いにそばをテーマに詩を書いたり、そばの写真を撮影したりしていました。そばが、この地域の人々にとっていかに大切なものか少しだけ分かったような気がしました。「森のそばや」は、そばの味を代々受け継ぐだけでなく、葛巻の人々のアイデンティティーを守っているように感じました。

森のそば屋

所在地:〒028-5403 岩手郡葛巻町江刈1-36(岩手県立葛巻高等学校より車で約7分)
電話番号:0195-66-3616
URL:https://iwatetabi.jp/spot/detail.spn.php?spot_id=1404
営業時間:10:30~17:00
定休日:無休
アクセス:JR御堂駅から車で約48分、葛巻町役場から車で約10分

撮影・取材:小森一太、杉本麗百
編集:杉本麗百