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Taste of Nature

地下水が育て上げた200年の味

奥羽山脈と出羽山地にはさまれた盆地にある秋田県・羽後町。「日本三大盆踊り」である西馬音内盆踊りで知られているこの土地で、200年以上受け継がれている味があります。文政元年(1818)創業の「弥助そばや」です。

ここのお蕎麦の特徴は2つ:夏冬問わずに「冷がけ」であること、そして麺のつなぎに「布海苔」を使うこと。毎日手打ちされるお蕎麦は、店主が「蕎麦の吟醸酒」と例える二八の配合で作られ、通常の蕎麦よりも伸びやすくなっているので、できたてを召し上がることで「つるっつるっ」という喉越しの良さと、そば粉と布海苔の豊かな風味を味わうことができます。

江戸時代より続く味の秘訣は、そば粉やネギといった素材へのこだわりの他にもあります。「ここの地下水が蕎麦の命だから。お店はほかへ動く訳にはいかないんです」と語るのは、六代目店主の金昇一郎さん。羽後町は湧き水が数多く出ていて、「長命水」など多くの人々を集める場所もあります。その水質がお店の味には欠かせないそうなのです。

手探りで身につけた伝統の技

「俺は師匠のいない6代目なんだよ」と店主さんが語るのは、先代が若くしてなくなったために29歳にして早々とお店を継ぐことになったためです。それ以前には先代によって和食の世界へ修業に出されていました。味自体は子どもの頃から慣れ親しんでいたものの、教わったことのない蕎麦づくりを手探りで進めること40年間。今では「西馬音内蕎麦」の元祖として、多くのお弟子さんを出しています。蕎麦づくりの伝道にも熱心で、2017年に発足された「西馬音内そば協会」の顧問として、蕎麦打ちの技法をプロアマ問わずに広められているそうです。

北前船に乗って来た「砂場系」の味

店名の由来である初代店主・弥助は、10歳の若さで放浪の旅へと出て、北前船に乗って大阪・砂場から蕎麦打ちの技法を持ち帰ってきたと伝えられているそうです。当時大名行列の通る宿場町として栄えていた西馬音内に持ち帰られた「白く細い」砂場系の蕎麦は、当時「黒く太い」藪系の蕎麦に慣れていた人々の間で人気を博したそうです。

記者の感想

「200年続く味」ということで少し身構えたけれども、喉越しのいい麺にツユとネギの風味が合わさってぐいぐい箸が進んでしまった。付け合せの天麩羅やお漬物も、地元の野菜にこだわっているらしい。強めの訛りで朗らかに笑う店主の昇一郎さんと喋っていると、歴史の重みを感じるというよりもむしろ「200年変わらないおもてなしの心」にほっこりとするのであった。

弥助そばや

所在地:〒012-1131 秋田県雄勝郡羽後町西馬音内本町90

電話番号:0183-62-0669

URL:http://yasukesobaya.jp

営業時間:11:00~14:00

定休日:不定休

撮影・取材:小森一太

編集:小森一太